わたしたちは止まらない。
未来への航海。
わたしたち新日本海洋社は、NYKグループの一員として、かねてより従来の化石燃料に代わる
環境負荷の低い次世代燃料によるタグボートの安全運航に力を注いできました。
次世代燃料を普及させるためには、誰かが実際に次世代燃料船を事故なく運航し、
従来船と同等の能力があることを証明する必要があります。
わたしたちはこのミッションを、社会から与えられた大きな“使命”と捉え、
『海運ゼロエミ化』実現の一助となるべく日々挑戦し続けています。
そして2024年8月23日、“世界初“となる商用アンモニア燃料タグボート
“魁(さきがけ)”が就航します。
『脱炭素』を目指す上で、重油や「ブリッジ燃料」と呼ばれるLNG燃料に代わる、CO2排出のない代替燃料による船舶運航は、わたしたちが取り組むべき大きなミッションであると考えています。さまざまな代替燃料が世界中で比較検討されている中、今回アンモニア(NH3)が採用された理由は以下の通りです。
● 燃焼時のCO2排出量がゼロであること。
●大量生産・供給が見込めること。
●LNGと比べ気化温度が高く、ハンドリングが易しいこと。
●世界中で生産・輸送されてきた歴史・知見があること。
一方、液化アンモニアを燃料として使用するにあたっては、難燃性・腐食性・毒性など、その物性に起因するさまざまな課題をクリアする必要があります。これらアンモニア燃料船の建造プロジェクトの前にたちはだかる課題の解決にあたって、わたしたちはこれまでの長年の次世代燃料船運航の経験や知見を活かし、プロジェクトをバックアップしてきました。2015年のLNG燃料船「魁」の時と同様に、わたしたちがアンモニア燃料船建造プロジェクトに参画し、運航者として安全運航を完遂することで、大型船へのアンモニア燃料普及が促進され、海運ゼロエミ化の礎を築くことになるものと、わたしたちは信じています。
「魁」は日本郵船株式会社が保有し、当社が運航するタグボートです。魁は日本初のLNG燃料タグボートとして東京湾内での作業に8年間従事した後、2023年10月、世界初となる商用アンモニア燃料船への改造工事に入りました。この工事は日本郵船株式会社、株式会社IHI原動機、日本シップヤード株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーションの4社が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のグリーンイノベーション基金事業の公募採択を受けた「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」の一環として行われました。竣工後は脱炭素効果や運航の安全性を検証するための実証運航を行うことが採択の条件とされており、当社の手でその検証を行って参ります。
「魁」へのアンモニア燃料のバンカリングは、LNG燃料船「魁」の知見を活かし、陸上のタンクローリーから専用ホースを船体に接続して行う“Truck to Ship方式”を採用しています。商業ベースで運航するアンモニア燃料船に対するTruck to Ship方式での燃料供給も、世界初の事例です。
安全第一の運航のために
アンモニアの毒性に対する備えPrepare for toxicity
「魁」は、アンモニアの物性である「毒性」に対する備えとして、船体設計上、人が立ち入る区画とアンモニア関連区画を可能な限り離しています。二重管による漏洩時の拡散防止、空気換気装置の設置、安全保護具の備置といったハード面の安全対策のほか、機関室への入室基準の策定や各種マニュアルの整備、特有のオペレーション方法について船員への研修を行うなど、ソフト面でも万全の体制を整えています。さらに、LNG燃料時の課題を踏まえ、就航後のメンテナンスのしやすさも重視した設計となっています。
排ガス後処理装置を搭載Exhaust aftertreatment system
「魁」はDual Fuelエンジンを搭載しており、アンモニア燃料、A重油のどちらでも航行が可能です。アンモニア燃料使用時は、燃料タンク内の液化アンモニアを気化させて使用しますが、ガス単体では自己着火が出来ないため、コモンレールシステムと呼ばれる微量のA重油を点火源として噴射する装置を用いることで燃焼を行います。また、アンモニアは他燃料と比べて燃焼反応性が低く、未燃アンモニアやNOx(窒素酸化物)、N₂O(亜酸化窒素)が発生するため、これらを処理する排ガス後処理装置を併せて設置しています。